グラフで理解する分散分析

医学領域で比較的使用されると思われる分散分析

 

例1 One-way factorial ANOVA
地域によるコレステロール値に差がみられるか。


地区によって差がみられるかを分散分析でおこなう。
どの地区とどの地区に差がみられるかは、多重比較(post hoc test)でおこなう。
最初から、群間の比較をしたい場合には多重比較(Tukey法など)をおこなう。


例2 One-way repeated measures ANOVA
デカドロン投与後の血圧の経時的変化



経時的変化に有意差があるかを分散分析でみる。
どの時点とどの時点に差があるか(主に投与前との比較)をみるのが多重比較。
投与前とその後の時点との比較をt検定する場合もある。

例3Two-way repeated measures ANOVAその1
出生体重別のMAPの出生後経時的変化の比較


体重間に差があるか、経時的変化に差があるかをみるのが分散分析。
もし3群以上の場合に、どの体重間に差があるかは、多重比較をおこなう。

例4Two-way repeated measures ANOVAその2
デキサメサゾン投与群と非投与群のMAPの経時的変化


投与群と非投与群のMAPに差があるか、経時的変化に差があるかは分散分析でみる。
しかし、この場合にはデキサメサゾンの投与が血圧の経時的変化に影響を与えたかどうかが問題で例3とは求めるものが異る。ここでは、治療の有無と経時的変化の間に交互作用があるかどうかが問題となる。このような経時的データの処理は、実際のところ非常に難しい。

例3のグラフのように2群がほぼ平行関係にあれば、直感的に交互作用はない。しかし、この例のように時間と共に、両群の間隔が開いていくような場合には交互作用ありとなる。もっとも、それを確かめるには検定を行うことになる。
 このような例では、投与前値の扱い方が問題となることもある。投与前値が、全く同じになることは通常ないので、その影響をのぞいた方がよい。それには、投与後の値と投与前値の差を経時的に比較するのが一つの方法である。つまり、6,12、18時間における前値との差でTwo-way repeated measures ANOVAを行うのである。そこで、交互作用がみられるかどうか。もしみられた場合、どの時点からどの時点で有意差があるかも知りたい。それには、各時点での2群の差の95%信頼区間を表示するとよい。0を含まないところが有意差ありとなる。各時点でのp値を示してもよい。多重性が指摘される場合もあるが、まず、ANOVAで検定していればあまり問題とならないし、考察もしやすくなる。

 もうひとつの方法は、前値を共変量として、分散分析する方法で、前値の差の影響をのぞくことが可能となる。

 このような、2群の経時的データの比較をどのように処理したらよいかは、統計学の参考書にもあまり詳しくは書かれていないことが多い。実際の文献では、各時点でそれぞれt検定しているものが多い。コントロールスタディで、ある薬剤を一回投与してその後の変化をみる場合、どの時点からどの時点まで有意な差がみられるかを知りたい場合には、各時点でt検定を行った方がよい場合もある。もちろん、ある一点のみ有意差があったから効果ありという結論ではまずいかもしれないが。こういったスタディの処理では、測定間隔をどうとるか、どの時点までデータをとるかも結果に影響を与える可能性がある。まず、ANOVAで検定するよりも、どの時点からどの時点までに有意な変化が起きるかを知るには、各時点での比較の方が読者には理解しやすいのではないだろうか。

 新生児では出生後に、循環動態が変動する場合ため、どうしてもコントロールと比較する必要性がでてくる。よって、このようなデータ処理が必要になることは希ではない。時に、循環系に作用する薬剤について投与後の変化をみて、24時間後に有意に血圧が上昇したというような発表がみられるが、これは他の治療法の影響や自然経過の可能性もあり、本当にその薬物の効果であるとは言えない。