傾向検定とMantelーHaenszel検定
  

1) 傾向検定とカイ2乗検定、およびWilcoxon順位和検定の使い分け


2×m分割表について考えてみましょう。

2xm分割表は、以下に示すような場合であり、臨床家はよく使用する表と思われる。しかし、その扱いは意外と難しく、
私もだんだん理解できてきた段階です。

まず、カイ2乗検定を使用する場合 

列が3つ以上あるが、順序関係(A地域、B地域、C地域)はない。→ カイ2乗検定(or 同等性の検定)

A地域
B地域
C地域
高血圧あり
20
30
25
高血圧なし
45
60
65

3つの地域で、高血圧の罹患率に差があるかどうかをみる検定である。 帰無仮説は、「3つの地域の高血圧患者の比率は同じ」
この場合、複数項目の地域に順序関係はなく、その地域における高血圧の比率をみる検定で、地域の順番が入れ替わっても結果は同じとなる。

 では、列に順序関係がある以下のような場合は?

喫煙なし
1日10本以下
1日11〜20本
1日20〜30本
高血圧あり
20
30
35
45
高血圧なし
60
55
45
50

 

喫煙の程度により、高血圧の割合が増加するかを検討したい場合には、傾向検定という方法がある。行(または列)が一定間隔で順序関係がある場合に、疾患のある、なしなどの割合が直線的に増加(または低下)していくかどうかを検定するもので、よく使われるのがコクランアーミテージ検定(chi-square test for trend)である。順序関係は、年代、年齢などでもいいので、経時的な変化の評価にも応用できそうである。
説明変数が3つ以上で順序関係があり、目的変数が2値(あり、なし)の場合と理解した方がいいと思われる。
グラフにすると以下のような関係で使える。


 (結果があり、なしの2値の場合に使用)

Cochran-Armitage検定:別名 Chi-square test for trend

Instatには、Chi-square test for trendとなっているのでこれを使えばよい。

 

 Cochran-Armitage傾向検定は、目的変数が、あり・なしの2値の場合に用いられるが、それは疾患の罹患率などを検討する場合であって、2地域や2種類の治療法などの検討には適さない。

 

では、「あり、なし」の2値でなく、もっと多い場合の傾向検定は? 連続変数の傾向の検定はノンパラメトリック検定のヨンクヒールタプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定で行う。

統計ソフトではEZR、SPSS、エクセル統計で可能とのこと。 神田善伸先生の「EZRでやさくしく学ぶ統計学」が参考になる。

 
2xm分割表でもうひとつよく見かけるのは、以下のようなものである。

       効果の程度
 悪化 不変  やや有効  有効  著効  計 
 A療法 10  12  10  15  52 
 B療法  7 12  43
 計  12 22  20  17  24   95

このケースに、カイ2乗検定を行うと悪化〜著効の項目におけるA療法とB療法の比率が同じかどうかを検定することになる。悪化と著効の項目を入れ替えても結果は同じであり、順序関係は考慮されない。 傾向検定が使えるかというと、説明変数が2つで目的変数が3つ以上となっており適さない。
ここで知りたいのは、A療法とB療法の効果に差があるかどうかなので、ここではWilcoxon順位和検定が適していると考えられる。
こちらは、傾向検定と逆に、説明変数が2値で、目的変数が3つ以上の順序関係がある場合が適応になる。

Wilcoxon順位和検定(Mann-Whitney検定またはMann-WhitneyのU検定)は、対応のない2群間のノンパラメトリック検定である。例えば、2群間でASTの値を比較したい場合には対応のないt検定を使用することが多いが、正規分布していない場合にはノンパラメトリック検定であるWilcoxon順位和検定を使用する。この例では、悪化=1、不変=2、やや有効=3、有効=4、著効=5と数値に置き換えて統計ソフトに入力する。


例えば、以下のような分割表の場合。

軽度 中等度 重度 最重度
40歳台 12 20 11 6
50歳台 6 10 10 5


このままでは、統計ソフトでは処理できないことが多い。
以下のようなデータ形であれば、問題ない。

40歳台 50歳台
3 2
2 3
2 4
3 4
2 2
2 2
3 3
2 1
2 4
2 3
2 3
2 2
3 2
2 1
3 1
2 3
2 3

Instatでは、compare enas(or medians)とRaw dataを選択。
さらに、non-parametric testを選択すればOK.



結果は以下のようになり P=0.316で有意差なし。






2) 交絡因子除去のためのMantel-Haenszel検定

Mantel-Haenszel検定は、2x2分割表において交絡因子除去を目的に用いられることが多い。

例えば、早産児でステロイド使用者と非使用者の慢性肺疾患発生についてA,B施設で検討したデータがあったとする。この2施設のデータに交絡因子が存在している場合に、単純にデータをまとめてカイ2乗検定するのではなく層別化した検定をしたい場合に用いる。

層別化はいろいろな因子で行うこともできるが、関係のない因子を層別するとかえって差が出にくくなることがある。

層別化の前提として各層での発病率に一定の差があることが必要である。
各層での共通オッズ比が一定であることの検定として、Breslow-Day検定がある。