どの統計学的手法が適当か

同じ結果でも、統計の方法により解釈が変わってくることはよくある.最適な方法は何かをよく考えることが重要である.


例1)χ2検定、t検定、Mann-Whiteney検定、Wilcoxon検定、反復測定の分散分析、ロジスティック回帰分析、重回帰分析

未熟児では、日齢0−2頃に高カリウム血症をきたすことがあるが、その予防にグルコースーインスリン療法(GI療法)を施行したとする.コントロール群と比較する場合、その効果判定法にはいくつかの方法が考えられる.
説明変数と目的変数の取り方によっていろいろな統計法が考えられる.

1)目的変数が高K血症の有無:この場合には、χ2検定かFisher検定を行うことになるが、高K血症を血清K値で定義しなければならない.その値の取り方によって結果は変わってくる.また、心電図異常発生の有無などで検討することも可能である.GI療法に何を期待するかで統計法も変わってくる.

2)目的変数が最高の血清K値:この場合には、二標本t検定か、Mann-Whiteneyを用いる.最高K値が正規分布していれば、パラメトリック検定の2標本t検定を、正規分布していなければ、ノンパラメトリック検定のMann-Whiteney検定を行う.

3)2群間の経時的な血清K値の変化Two-way Repeated-Measures ANOVAを行う.たぶん、GI開始前の血清K値はほぼ同じくらいと考えられる.まず、両群に差があるかどうかをみて、次に時間の経過と共に両群が異なった変化をするかどうか、つまり交互作用があるかどうかを検定する.
しかし、こういったケースにANOVAを使うと、判定が却って難しくなってしまうため、経時的に血性K値について t 検定を行っている場合の方が多いようだ。経時的な輪切り検定については、多重性の問題が生じるが傾向を知るうえではこちらの方が適しているかもしれない。


4)交絡因子の調整をしたい場合:このスタディがよくコントロールされたもので、両群の背景因子にかたよりがなければ、背景因子を調整する必要はない.しかし、血清Kに影響を与える他の因子(たとえば在胎週数)に偏りがあるとGI療法の効果の他に未熟性という因子が絡んできてしまい結果に影響を与える可能性がでてくる.こういう場合には、多変量解析を用いて、交絡因子を調整することが重要になる.
目的変数が、高K血症の有無や、心電図異常の有無など2値の場合にはロジスティック回帰分析が利用できる.説明変数は、GI施行の有無、在胎週数、胎児仮死の有無、血清クレアチニン値など.この場合、GI療法が有効かどうかを知りたいのであるから、その他の因子は交絡因子の調整といった目的で使用することになる.高K血症をきたす危険因子を探る目的の場合には、多くの説明変数のなかから有意なものを探り出すということになる.例えばステップワイズ法を用いる.

5)目的変数が最高血清K値で、説明変数がGI療法の有無、在胎週数、血清クレアチニン値、仮死の有無などの場合には重回帰分析が適応できる.この場合、最高血清K値は、正規分布していることが条件になる.在胎週数などは交絡因子の調整として用いる.



例2)独立性と同等性の検定、Mann-Whiteney検定、クラスカル・ワーリス順位和検定Friedman検定


a) A国とB国の乳児の寝るときの体位の比が同じかどうかをみるには、同等性の検定をおこなう.
うつ伏せ寝
仰向け寝
一定せず
A国
33%
30%
37%
B国
28%
35%
37%


b) 巨人ファンかどうかが地域と関係あるかどうかを知りたい場合には、独立性の検定をおこなう.
A地区
B地区
C地区
巨人ファンである
35人
40人
52人
巨人ファンでない
45人
20人
28人


しかし、同等性の検定と独立性の検定は、仮説は異なっていても結果は全く同じになる.
この検定は、統計ソフトで簡単にできる.

この場合には、どちらの要因にも順序関係は認められない.


C)
しかし、次の例は順序関係がみられるので2群間の検定(Mann-Whiteney検定)を用いる.

治療法AとBの効果の差をみたい場合.

無効
やや有効
有効
著効
治療法A
3
5
10
9
治療法B
5
8
2
7


この場合には、無効、やや有効、有効、著効を1〜4の数字に置き換えて検定する.例えば次のように変換する.

治療法
効果
A
3
A
1
B
3
A
4
B
3
A
2
A
1
B
4
B
1


D)この治療法が3つ以上になったら、クラスカル・ワーリス順位和検定を用いる.


E)分類尺度を時間的変化でみる場合には、Friedman検定を用いる.

0か月

1か月

2か月

3か月

無症状

軽症

中等症

中等症

軽症

無症状

重症

重症

重症

重症

重症

中等症

中等症

中等症

重症

重症

軽症

軽症

重症

重症

軽症

軽症

中等症

中等症

例3)
思案中